ハイテン鋼|グレーチングへの採用事例

ハイテン鋼を使用したグレーチングの施工事例

本稿では、株式会社宝機材が開発し累計400万枚以上の納入実績を持つ「ハイテングレーチング」について、その開発に至った経緯と採用された技術的アプローチを紹介します。
この開発において、キーマテリアルとなったのが光陽産業株式会社のハイテン鋼(高張力鋼)です。一般構造用鋼材SS400が抱える課題に対する製品開発の一事例として、その詳細をご紹介するものです。

ハイテン鋼を使ったグレーチング

日々の設計・製造業務において、製品の軽量化強度の維持を両立させることは、常に重要な課題です。

  • 製品の軽量化を実現したいが、強度は絶対に落とせない
  • コストと品質のバランスに、常に頭を悩ませている

鋼材SS400をお使いの企業様であれば、一度はこのような課題に直面されたことがあるのではないでしょうか。土木建築資材のメーカーである株式会社宝機材がユーザーを対象に実施した顧客へのアンケート調査でも、特に「グレーチング(鋼製側溝蓋)の軽量化」に対する強いご要望が寄せられました。

SS400での軽量化が直面する「強度の壁」

SS400を用いて軽量化を図るには、主に二つの技術的な課題を乗り越える必要があります。

  • 降伏点の課題→従来と同じ荷重をかけた場合にも曲がらないか。
  • 引張強さの課題→従来と同じ荷重をかけた場合にも破断しないか。

これらの条件を満たすため、同社は様々なハイテン鋼の可能性を探りました。

しかし、市場に流通する多くのハイテン鋼はオーバースペックで価格が高かったり、製造ロットが大きすぎたりと、現実的な選択肢とはなり得ませんでした。

試行錯誤の末に辿り着いた「最適解」

開発過程では、100キロ鋼のような極端に強度の高い材料を試すアプローチもありましたが、その場合は加工機の刃が著しく摩耗するなど、製造現場での新たな問題が発生しました。

強度、価格、ロット、そして加工性。これら全ての要素を高い次元で満たす「全体最適」の解を探し求めた末に、同社が着目したのがSS540相当の鋼材でした。

さらに、ハイテン鋼に起こりがちな、めっきの「過剰付着」という問題。この問題も過剰付着する領域から外れたシリコン値の原料を選別することで解決しています。

グレーチングに使用したハイテン鋼(SS540鋼)

グレーチングに使用したハイテン鋼(SS540鋼)

「ハイテンは割れやすい」その常識を覆す

開発当初、顧客からは「ハイテンは硬い分、割れやすいのではないか?」というご懸念の声も上がっていました。確かに、SS490以上の鋼材は一般にハイテン鋼と呼ばれますが、その特性は実に様々です。

この開発で採用された鋼材は、単に硬いだけではありません。

降伏点と引張強さのバランスを最適に調整することで、粘り強さを両立させています。その信頼性の証として、この鋼材で製造されたグレーチングは、実に400万枚以上という納入実績を誇ります。

この開発が成功した背景には、細かなニーズに粘り強く応える、光陽産業株式会社の機動力と卓越した技術力あったことが挙げられます。業界初となる3×1.8ミリという極薄アイバーの量産実現もその技術力の賜物です。

ハイテン鋼で作られたグレーチング

ハイテン鋼で作られたグレーチング

削減効果の実証と新たな製品への展開

ハイテン鋼の採用はグレーチングの耐荷重性能を維持しつつ、製品重量平均30%軽減やそれに伴う製造・運搬時のCO2削減など、大きな効果を示しました。

そして、この開発で実証された技術的優位性が、その後も別の製品展開へと繋がっていきます。

薄肉化メリットを応用して開発された新たな製品

薄肉化メリットを応用して開発された新たな製品

高機能鋼材「SS540+」を製品化

この、数多くの実績に裏打ちされた鋼材の規定値をさらに厳選し、より高い品質と安定性を追求して生まれた ハイテン鋼が「SS540プラス」です。

SS540+はSS400と比較して高い降伏点と引張強さを持ちながら、加工性やコストのバランスにも配慮した、まさに「痒い所に手が届く」鋼材であると言えるでしょう。

SS400とSS540+のスペック比較

SS400 SS540+
降伏点 245N/mm2以上 420N/mm2以上
引張強さ 400~510N/mm2以上 600N/mm2以上

ハイテン鋼の可能性と新しい価値

「SS540+」は、グレーチングという分野でその圧倒的なポテンシャルを証明しました。

しかし、その可能性は決してそこに留まるものではありません。現在SS400で設計・製造される他の製品においても、「さらなる軽量化」「トータルコストの削減」「付加価値の向上」といった、新たな可能性を示唆しています。

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