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控え壁に替わるブロック塀の耐震補強|FITパワー

控え壁に替わる耐震補強

大林株式会社のFITパワーは、ブロック塀の倒壊から人命を守るための耐震補強金具です。

現代の住宅事情に合わせた省施工が特徴で、その高い安全性が認められ一般社団法人防災安全協会主催 防災製品大賞2018において復興支援部門金賞を受賞しました。

従来の固定概念を覆す発想から製品化に成功した開発秘話をご紹介します。

ブロック塀の耐震補強金具FITパワー

ブロック塀の耐震補強金具FITパワー

人命守る耐震エクステリアへの想い

地震の多い国、日本。

人々が安心して暮らし、学び、仕事をするため、ビルやマンション、公共施設といった建物はいずれも大きな揺れに耐えられるように耐震化されています。

これは、ゼネコンやハウスメーカーを中心に「産・官・学」が連携して安心安全な社会をつくりあげようと尽力してきたためです。

一方で、エクステリア業界においては耐震化への意識はまだまだ低く、建物に比べ対策が遅れています。

建物のような法整された耐震規定がなく、耐震化についての認識は希薄で、「人命を守る」という意識の共有は進んでいないのが現状です。

コンクリートブロック塀倒壊の危険性

ブロック塀の耐久年数は約30年。もっともこれは良質な施工によって設置されたブロック塀を前提としております。

良質な施工とは具体的に、基礎の立ち上げ、鉄筋の間隔、高さの制限など建築基準法で定められた規定をクリアしていることを指します。

構造規定が守られないまま乱造されたブロック塀や経年劣化したブロック塀は、わずかな地震の揺れや台風等による強風によって倒壊する恐れがあるため、生命を脅かす存在になりかねません。

狭小地の邪魔な控え壁が開発のきっかけに

ブロック塀の高さが1.2mを超える場合、「控え壁(ひかえかべ)」の設置が法律で定められています。

しかし、このでっぱりが狭小地では通行の障害となり、控え壁なしで建てられたものやリフォーム工事等で、元々あった控え壁を撤去してしまう現場が多くありました。

このような背景から、住む人々の「利便性」と「安全」を両立できるエクステリア製品を作りたいという想いがFITパワー開発のきっかけとなりました。

ブロック塀の控え壁

控え壁の固定概念にとらわれない発想

そもそも、「控え壁」とはブロック塀に対して垂直方向に突き出す構造にすることで横の荷重を受け止めるというとても大切な役割があります。

とても大切でちょっと邪魔な壁。

“大切なのは、「役割」で「形」そのものじゃない”

同社では、「控え壁はこの形でなければいけない」という固定概念にとらわれず、控え壁本来の役割に着目し、製品化を進めました。

デッドスペースをつくらない画期的な形状

控え壁はその名の通り「壁」の形状だったのに対し、FITパワーの支柱はL型の構造です。

これで狭くて通れない、または、通りにくいという利便性の低下を解消し、スペースが有効利用できるようになり、控え壁のデメリットとなっていた問題を見事解決しました。

控え壁とFITパワーの比較

軽量化が耐震化を進めるカギ

ブロック塀の耐震化が進まなかった要因の一つに「狭小地には重機が入れない」という問題がありました。よって、人力での持ち運び、施工ができる重さに抑えることが製品化のカギでもありました。

金具の強度や施工性を保ちつつ、軽量化を追求した結果、溝形鋼JISG3101(SS400チャンネル材)を採用。重量を抑えることに成功しました。

FITパワーの一番大きい規格サイズ18型で重さは約35kg。人力での持ち運びに対応できる重さです。

土壌の性質に左右されない素材の選定

FITパワーは地中に杭基礎を作り地盤摩擦力を利用する構造です。そのため、どのような土壌でも劣化せず機能を維持できなければなりません。

これには、法面擁壁やトンネル天井でも使用されているガラス繊維強化プラスチック(GRP)製ロックボルトを採用。

施工する場所の土壌がアルカリ性なのか酸性なのか、性質に左右されずに設置できます。

職方不足・熟練度の格差を克服

エクステリア業界は、職方の高齢化の影響を受けています。また、後継者不足も深刻化しており、職方の熟練度に大きなばらつきが生じていることも問題になっています。

とはいえ、こうした職方の不足問題は一朝一夕で解決するわけではありません。

軽量化による人力施工や、作業工程の少ない省施工はこのような人手不足の問題にも貢献しています。

控え壁の代用品という選択肢

大林株式会社では創業以来「エクステリア製品の倒壊から人命を守る」という理念のもとに耐震エクステリアを推進、製品開発をおこなってきました。

この「FITパワー」もその一つです。

 FITパワーの発売当初は「良いものを開発されましたね」と反響がある一方、注文は乏しく、耐震意識を変えることは難しかったと言います。

しかし、展示会への出展を続けることで徐々に認知され、熊本地震・大阪北部地震を契機にエクステリア業界だけではなく、教育委員会や市区町村、病院など公共施設や大手不動産会社からの問い合わせが増えました。現在では「自宅のブロック塀に取り付けたい」と、一般の方からのお問合せも増えています。

安全性に問題のあるブロック塀は解体撤去が国の基本方針です。

しかし、隣地境界等諸問題で解体・撤去ができない古いコンクリートブロック塀に対してはFITパワーで「耐震補強」という選択肢があることを知って頂きたいと願っています。